アノニムのこと
ツイッターではちらほらとつぶやいていましたが、最近木彫りのお面を製作しました。
松の木材を彫って、磨いて、塗って、磨いて、北海道の公募展に提出しました。
「六花ファイル」という公募展。お菓子メーカー六花亭が主催しています。
締め切りの二週間前くらいに知ったのでかなり集中して製作しました。慌ただしく製作したせいか、寒波のせいか、北海道への到着も遅れてしまって、結果はまだわからないです。
肝心の作品の話。
写真をほとんど撮らずに送ってしまったので、感想途中の一枚。
作品に添えたボードも撮り忘れたのが残念。結構カッコよく作れたのに。
タイトルは「アノニム」。意味は匿名者。
名もない誰かは何か言いたげ?仮面をつけたあなたも誰かにとってのアノニム[匿名者]
なんて言葉を作品に添えました。
作品についてたくさん話すのは苦手ですが、そうは言っても、言った方が伝わりやすいだろうので少しだけ書こうと思います。
匿名者というのはモザイクで顔を隠されて誰だかわからなくなってしまった誰かをイメージしていて、その人たちはそれでも何か話します。街頭インタビューなんかで見るような一場面。知らない人が、自分のことを話している。カメラの前で。
モザイクなんかなくても街ゆく人はみんな違っていても、誰だかわかんないような誰かでしかなくて、テレビと違うのは何も話さないこと。知らない人が知らないまま過ぎ去っていく。それだけ。
それでも人と向き合う時はあって、そんな時、誰かは何か言いたげな誰かであって、自分も相手にとってそうであって、お互いに自分自身を知っている。
匿名でもなんでもいいから、沈黙の一線を超えてその声を聞きたい。
そんな人と人のあり方にまつわる願いの原型、それを形にしたくて、作りました。
解放のための面。話すための面。
とはいえどんな風に思っていただいてもそれはそれで面白いし、嬉しいです。
ここからは製作過程について。
まずは木材に絵を描いて大体でカットします。最初からタイトルは「アノニム」でした。
そして淡々と彫り進めます。大体50時間くらい。
ちょっとずつ陰影が濃くなっていくに従って面らしい雰囲気が出てきます。
この辺になると何か喋り出しそう。
そしてヤスリで磨き上げます。
着彩しない部分をオイルで仕上げたのちに色検討。
着彩後のオイル仕上げで乾燥中のアノニム。こっちをみている。
木材への着彩に苦労しました。アクリル絵の具でヌルっと厚く仕上げるのか、水彩で姫の表情を残して仕上げるのかを迷った結果、水彩の上から蜜蝋で仕上げました。
よくいえば民族的な様子で、トーテムポールみたいな質感。
悪くいえば小学生のような仕上がり。
でも気に入っています。
製作時間は大体80時間くらいかかったかもしれません。
次に作りたいもののアイデアもどんどんやってくるので、次はもっと早く作っていきたい。
初めてのしっかりした木彫り作品だったので、慣れないことばかりで非常に苦労はしましたが、なんとか仕上げることができました。
まだまだ拙いことは百も承知ですが、作り続けるしかないです。
上手くなりたいのもありますが、それ以上に作ることは生きることにまつわる代謝の一つであって、下手くそな奴が下手くそでもなんでも、無意味でも、楽しそうに作っている、そのことを見せることにさえ私としては意味があります。みた誰かが面白がって作り始めたら面白い。
おしまい